歯並びを美しく整える歯列矯正。
かつては方法が限られていましたが、現在では多くの方法が考案されており、心理的な負担が少なく行えるようになっています。
歯列矯正の各方法とメリット、デメリットをお教えします。
目次
歯列矯正の方法は一つではない
歯列矯正は、歯の表面にブラケットと呼ばれるワイヤーをつける装置を接着し、ワイヤーをわたして締めることで歯を動かしていくのが一般的な方法です。
ただし、次のような悩みがありました。
・外から見て目立つ装置をつけているのが気になる
・営業職など対人の仕事に支障が出る
・治療期間が長いのでなかなか始められない
こうした悩みは、少し前まで金属のブラケットを使って行う大がかりな矯正が一般的だったからです。
今でもこのイメージが強く、なかなか矯正に踏み切れない方も少なくありません。
しかし、今は審美性の高い器具や方法が考案され使用され、以前よりも矯正に対するハードルは低くなってきているのです。
表側矯正
◎方法
上下の歯の表側にブラケットを装着する方法です。
かつては金属製のブラケットを使用していたので非常に目立ち、何年も外せないことに心理的な抵抗を感じる方がいましたが、現在は目立たない透明なプラスチック製のブラケットを使用するのが一般的です。
矯正には半年〜3年程度かかります。
表側矯正は、次のような手順で行います。
1.初診(口腔内検査と治療計画の説明)
2.歯科衛生士によるクリーニング
3.矯正装置をつける
4.以降は2〜6週間に一回受診して、ワイヤーの調整などを行う
5.矯正終了後は、後戻りを防ぐためリテーナー(保定装置)をつける
◎メリット
一般によく行われる矯正方法なので、症例も非常に多く矯正歯科であればどのクリニックでも受けることができます。ミリ単位での調整も可能で美しい仕上がりにすることが可能です。
◎デメリット
従来の装置よりも目立ちにくいものの、ブラケットもワイヤーも歯の表面につけるので外から見て分かります。
また、装置がずっとついているので歯磨きがしにくく、ブラケットの隙間に汚れが溜まりやすいため虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
裏側矯正(舌側矯正)
◎方法
上下の歯の裏側に透明なプラスチック製のブラケットを装着し、ワイヤーを渡します。
裏側矯正の手順は、表側矯正と同じです。
◎メリット
歯の裏側につけるので、矯正していることが外から見えにくくなります。
また歯の裏側はエナメル質が厚く、虫歯になりにくいという特徴があります・
◎デメリット
装置が内側についているので、話すと舌があたったり食事がしにくかったり発音しにくくなることがあります。
また、装置が粘膜にあたって口内炎ができやすくもなります。
装置がずっとついているので歯磨きがしにくいのもデメリットです。
ハーフリンガル矯正
◎方法
目立つ上の歯だけを裏側矯正にし、下側は表側矯正を行います。
ハーフリンガル矯正の手順は、表側矯正や裏側矯正と同じです。
◎メリット
笑ったり話したりするときに見える上の前歯の装置が外からは見えないので、気になりません。
◎デメリット
装置が内側についているので、話すと舌があたったり食事がしにくいことがあります。ま
た、装置が粘膜にあたって口内炎ができやすくなります。
装置がずっとついているので歯磨きがしにくいのもデメリットです。
マウスピース矯正(インビザライン)
◎方法
軽度の矯正ですむ場合に、ブラケットとワイヤーではなく、取り外し可能なマウスピース(アライナー)で行う矯正です。
一日に20時間以上は装着することが望ましいですが、食事や装置が見えては困るときには、いつでも外すことができるというのがワイヤー矯正と大きく異なるところです。
マウスピース矯正は、次のような流れで行います。
1.初診(口腔内検査と治療計画の説明)
2.歯科衛生士によるクリーニング
3.オーダーメイドでマウスピースを作る
4.2週間〜2ヶ月に一度くらいのペースで、新しいマウスピースと交換する
5.矯正終了後は、後戻りを防ぐためリテーナー(保定装置)をつける
◎メリット
つけているときも目立ちにくく、取り外しができるので食事が通常通り取れます。
歯磨きもいつもと同じようにできますし、装置も洗えるので衛生的です。
ブラケットやワイヤーのように粘膜にあたりにくいので口内炎のリスクも少なくてすみます。
◎デメリット
乱ぐい歯など、歯並びがかなり悪い場合には使えないケースがあります。
また、一定時間きちんと装着しないと、矯正が終わるまでに長期間かかることもあります。
正しく行えるクリニックも一般矯正よりは少ないです。
コルチコトミー矯正
◎方法
外科手術で顎の骨に切れ込みを入れて行う矯正治療法です。
すべてのケースで適用できるわけではありませんが、抜歯をせずに短期間で矯正できる新しい方法です。
認定を受けたクリニックでのみ受けることができます。
コルチコトミー矯正は、次のような手順で行います。
1.外科手術で顎の骨に切れ込みを入れる
2.通常と同じように矯正装置を装着する
3.1~2週間に1回受診する
4.矯正終了後はリテーナー(保定装置)をつける
◎メリット
歯を動かしやすくして矯正するので、治療期間が短縮できます(約6ヶ月~1年)。歯を動かすことで生じる痛みも少なくてすみます。また、通常の矯正では抜歯が必要なケースでも、抜歯をせずに矯正できることがあり、後戻りもしにくいといわれています。
◎デメリット
外科手術が必要になるので、身体的・心理的な負担があります。また、費用も一般的な矯正より高めで、できるクリニックも限られています。
まとめ
矯正の方法は、かつてのイメージとはだいぶ異なるものになっています。
目立ちにくく治療期間も短くてすむ方法が考えだされて、心理的な負担が減りました。
「矯正してみたいけれど、見た目や期間を考えると、どうしようか迷ってしまう」という方は、矯正専門医に相談してみるとよいでしょう。
また、どの矯正治療であっても口腔ケアを念入りに行う必要があります。