歯を失ってしまった際の補綴治療として、ブリッジや入れ歯に代わる定番となったインプラント。現在では多くの方がインプラント治療の恩恵を受けており、一昔前とは比べものにならないほど一般的に知れ渡るようになった優れた歯の補綴治療の一つです。
インプラント治療を受けて”しっかりと噛むことができる”という喜びを実感している患者さんの数が増えている一方で、適切なアフターケアを行うことができておらず“インプラント周囲炎”というインプラント部分の歯周炎を発症している患者さんの数も多くなっていることが分かっています。
インプラント治療を受けた後も歯科クリニックでの適切なケアを怠らず、ご自宅でのセルフケアも適切に行うことができている患者さんはインプラント周囲炎をしっかりと予防できているでしょう。しかし歯科クリニックでの定期検査やセルフケアを怠ってしまっているという患者さんは注意が必要です。
目次
インプラントも歯周病になる!?
歯周病になるのは天然歯だけではありません!
インプラントをされている歯も注意が必要です!!
インプラント周囲炎という言葉、耳にしたことはありませんか?
インプラント周囲炎とは、インプラントの歯周病の事です。
インプラントはチタンとセラミックで作られていますので、虫歯になることはありません。しかし、インプラントを埋入しているのは患者様ご自身の骨でその周囲には歯茎があります。
磨き残しなどがありますとインプラントの根元に歯垢(プラーク)がたまります。それが次第に悪化していくと、天然歯(ご自身の歯)と同じように歯周病菌によりインプラントを支えている周りの骨が溶けていきます。
そうなると、インプラントを支えている土台(骨)が無くなった状態になるのでインプラントはぐらつき、やがては抜け落ちてしまいます。
インプラント周囲炎と要因
インプラントを支える顎の骨に炎症が達した状態、
すなわちインプラントの歯周病を正確にはインプラント周囲炎と呼びます。
そして、インプラント周囲炎の要因は、従来の歯周病と全く同じでプラーク内の歯周病菌による感染です。
また、喫煙や噛み合わせの調整を行わないことでも、インプラント周囲炎が引き起こされる可能性があります。
さらに厄介なのが、天然の歯に比べてインプラントの方が口腔内のケアが難しいという事実です。
インプラント周囲炎の予防の基本はプラークの除去であり、いわば毎日の歯磨きです。
ただ、インプラントは元の歯と全く同じサイズにするのは難しいため、
そのせいで歯と歯の間に隙間ができて食べ物が詰まりやすく、従来よりも汚れが溜まりやすいのです。
インプラントを長持ちさせるアフターケア
生涯にわたってインプラントを維持していくためには、正しいブラッシングと定期検診が欠かせません。継続することは大変かもしれませんが、アフターケアを怠るとインプラント歯周炎にかかってしまい、せっかくの治療が台無しになってしまう恐れもあります。日頃の少しの配慮によって、インプラントを長持ちさせることができるのです。
日々健康に配慮することは、インプラントを長持ちさせることに限らず、あなた自身の生活をよりよいものに変化させていきます。インプラントを維持していくことを通して、生活の質(QOL)を向上していきましょう!
ホームケア~ブラッシング
ご自宅で行っていただくアフターケアとして、ブラッシングがあります。インプラントを長持ちさせるためには日頃のブラッシングが欠かせません。ただ、毎日ブラッシングしていても、その方法が正しくなければよりよい効果は得られません。せっかく毎日ブラッシングするのですから、正しいブラッシング方法を身につけましょう。当院でていねいにアドバイスさせていただきますので、お気軽にご相談ください。
プロケア~定期検診
歯科医院で行うアフターケアとして、定期検診があります。定期検診も、インプラントを長持ちさせるためには欠かせません。悪いところがあれば早期に治療でき、致命的なダメージを避けられます。お口の中の細かいチェックを受けて、インプラントを長持ちさせましょう。
PMTC
歯科医院における定期検診以外のアフターケアとして、PMTCがあります。専用の器材を使用して、日頃のブラッシングでは落としきれない歯垢などを取り除き、お口の中をきれにクリーンニングします。歯周病・虫歯予防にも効果的です。
インプラント周囲炎の治療方法
インプラント周囲炎になってしまった場合の治療方法ですが、これは進行の度合いによって全く変わります。
基本は細菌の除去であり、インプラントの周囲に蓄積した歯石やプラークを専門の器具で除去します。
インプラント周囲炎の初期段階であるインプラント周囲粘膜炎の場合には、適切なプラークコントロールを行うことによって症状が改善されます。
しかし歯周組織にまで炎症が広がりインプラントにまで汚れが付着している場合には、インプラント表面を綺麗にしていきます。
さらに歯周ポケットに薬剤を詰める、もしくは薬剤でうがいをして口腔内の殺菌も行います。
ここまでが非外科的療法であり、初期段階のインプラント周囲炎ならこれだけで完治可能です。
さらに炎症が進行し、歯槽骨の吸収が始まっている場合には外科的な処置が必要になります。その場合には歯肉を切開し、インプラントに付着した汚れを除去したり、歯周ポケットを切除しなければならない場合もあります。
万が一歯肉の退縮が進行している場合には歯肉を増やす治療が、歯槽骨の吸収が進行している場合には骨を増やす治療が必要になる場合もあります。
まとめ
痛みなどのトラブルが無いからといって自己判断で定期的なメンテナンスを怠ってしまえば、知らず知らずのうちにインプラント周囲炎が進行してしまう可能性があります。
しっかりとメンテナンスなどのアフターケアを行い、インプラント周囲炎を防ぎましょう。