前歯と奥歯のインプラント治療の違いやそれぞれの注意点について

はじめに

インプラントとは人工の部品や材料を体内に埋め込むことを言いますが、歯科医療分野では歯をなくした時にあごの骨に親和性の高い材料で作製された人工歯根を埋め込んで、そこにセラミック製の人工歯を装着することを言います。
一般的にインプラントと言われているものはこの歯科用インプラントのことです。
インプラント治療は残された歯への負担が軽く、天然の歯のような審美性や機能性を回復できることがメリットです。
ただ、前歯と奥歯とではインプラント治療を行う際に注意するべき点が違っています。
ここでは前歯と奥歯のインプラント治療の違いや注意点についてご紹介します。

インプラント治療の歴史

そもそもインプラント治療が行われるようになった経緯とはどういったものなのでしょう。
スウェーデンのブローネマルク教授という人が1952年に研究のためうさぎの骨にチタン製の器具を埋め込む実験をしていたところ、研究が終り取り出そうとしても骨としっかり結合してしまい取り出せなかったそうです。
教授はこれに気づき研究を進めた結果、1965年にチタン製のインプラント体を人体へ臨床応用することを始め、1980年頃には世界的に評価が広まり、それ以降歯をなくした場合の治療法として世界中でインプラント治療が行われるようになりました。

前歯のインプラント治療

奥歯と比べた時に、前歯のインプラント治療はどう違うのでしょうか?

・前歯は骨が薄い

奥歯と比較すると、前歯のあごの骨は薄いと言われています。
その薄い前歯のあごの骨にインプラントを埋め込むと、さらに骨が薄くなってしまうリスクがあります。

・歯ぐきが痩せやすい

骨が薄くなると、歯ぐきも痩せていくと言われています。
骨の高さが下がるとその上にある歯ぐきも落ちていくからです。

・治療費が高くつく

前歯をインプラント治療すると奥歯より治療費が高くつくと言われています。
前歯をインプラントにする場合、前もって骨を増やすとインプラント治療を行っても薄くなるリスクがなくなります。
その方法としては骨を造成するか骨移植が挙げられます。
骨移植の場合は安全な人工骨かご自分の骨を使って移植を行います。
高齢化が進んでいる現在、患者さんの骨を利用するより人工骨を使うことの方が増えているそうです。
歯ぐきも骨と同様痩せやすいので移植を行います。
歯ぐきを移植する場合は患者さんのお口の中から採ったものを使うことがほとんどです。
こういった処置を行う必要があるため、前歯のインプラント治療は費用がかかるわけですね。
さらに、骨が委嘱した後安定するまでは半年程度治療を休む必要があります。
ただ、こういった丁寧な処置を行うことで目につきやすい前歯であっても美しいインプラント治療ができるとも言えます。
多少お金や時間がかかったとしても、前歯をインプラントにするメリットは多いです。

奥歯のインプラント治療

・力を分散させる必要がある

奥歯は別名臼歯とも言われており、その名前の通り臼のように食べものを細かくすりつぶす役目があります。
硬いものを噛む時は当然ですが、重いものを持ち上げる時なども奥歯にはかなり力がかかります。
つまり、負荷がかかる歯なので失った時と同じ本数のインプラントを埋め込み力を分散させる必要があるわけですね。

・骨を造成する必要がある

上あごの奥には上顎洞と言われるものがあり、下あごには神経が通っている下顎管と言われるものがあると言われています。
骨の量が少ない方の場合、治療をそのまま行ってしまうと傷がついてしまうことがるので、骨を作ってからインプラント治療を行う必要があるのです。

・あごが疲労しやすい

奥歯をインプラント治療する際、口を大きく開いていなくてはならないため他の部位を治療する時よりあごが疲れやすいことも特徴です。

前歯をインプラント治療する際の注意点

前歯をインプラント治療する際、注意するべき点があります。
どういったことに注意すればいいのでしょうか?

・審美性が求められる

前歯だと機能面はもちろんのこと、審美性が非常に大切になってきます。
周囲の天然な歯と調和を取って自然な見た目にし、歯ぐきと被せものの境い目を黒ずませないように治療するには歯科医師の技術力と経験が必要になります。
つまり、審美性が求められる難易度の高い治療になるということですね。

・骨が薄い

上でもご紹介した通り、前歯をインプラントにする場合奥歯と違い歯を支えている骨が薄いことが挙げられます。
また、手術の刺激によって骨が溶けてしまうこともあるようです。
そうなると、審美性が劣ってしまうほかインプラント自体を支えるのが困難になります。

・歯ぐきが下がる

骨が吸収されるとそれに伴って歯ぐきも下がってきます。
歯ぐきが下がると、周りの歯より長く見えたりと審美性の面でかなりデメリットになるため、注意が必要です。

・噛み合わせに気を配る必要がある

奥歯と同様、前歯も噛み合わせは非常に重要です。
噛み合わせが悪いと、しっかりとものを噛めませんが歯が当たりすぎても欠けたりすることがあります。
この噛み合わせのバランスを考慮しながらインプラント治療を行うのは奥歯にはない難易度の高さがあります

奥歯をインプラント治療する際の注意点

前歯と同様、奥歯をインプラント治療する際の注意点もさまざまでです。
しっかりと治療について納得した上で受けるためにも理解をしておくようにしましょう。

・あごの組織に気を配る必要がある

上あごには上顎洞、下あごには神経が通っているので、傷が付くと後遺症が残るリスクがあります。
骨が薄い場合は骨を作る手術が必要です。
さらに、骨の状態や神経や血管がどこに通っているか調べるためにもCT検査などが必要です。
これを行うことによって、血管の位置や骨の厚みなどを3次元的にチェックできるので、トラブルや事故を未然に防ぐことができます。

まとめ

前歯と奥歯のインプラント治療の違いや、それぞれの治療の注意点についてご紹介しました。
どちらも注意するべき点があり、しっかりと理解した上で治療に臨む必要がありそうです。
もし、不安な点や疑問点があればクリニックで歯科医師に質問していただき、納得した上でインプラント治療を受けてくださいね!

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